共創資産運用クラブ | RESEARCH SERIES VOL.07 | 会員限定配布資料を再編

2026-07-27

共創資産運用クラブ | 岩田 誠一 | 原田真由美
共創資産運用クラブ2026年7月発行 / 夏季特別号 / 非売品・会員共有用
MARKET OUTLOOK REPORT

静かな波の下で動く資金——2026年後半の資産配分をどう読むか

表面上の指数は穏やかでも、個別銘柄と債券利回り、為替のねじれはむしろ深まっている。 本レポートでは、共創資産運用クラブの岩田誠一講師が「守りながら増やす」という一見矛盾した命題を、現場の言葉で解きほぐす。

岩田誠一
岩田 誠一(いわた せいいち)
共創資産運用クラブ 主席講師 / 長期資産形成プログラム統括

一、序章——「勝ち続けている」という空気の危うさ

2026年の前半を振り返ると、多くの会員から「思ったより穏やかだった」「むしろ退屈だった」という声が聞こえてきた。 退屈は、ときに最大の敵になる。退屈な相場ほど、人は「何か新しいことをしなければ」と手を出したくなるからだ。 岩田講師は六月の定例会でこう切り出した。「数字が綺麗に見えるときほど、説明資料の行間を読んでほしい」。 その一言は、賞賛というより注意喚起に近かった。会場は一瞬静まり、やがて拍手が起こった——拍手の意味が全員で揃っていたかは、別の話である。

クラブが掲げる「共創」とは、講師が答えを与え、会員がそれをなぞる関係ではない。 むしろ、同じ情報を見ても解釈が分かれることを前提に、対話を重ねる場だと岩田氏は繰り返す。 だが現実には、対話よりも「岩田さんがこう言ったから」という一言で意思決定が閉じてしまう場面も少なくない。 本人はそれを好ましく思っていない様子で、会後に「私の発言が結論になってはいけない」と漏らしたこともある。 理想と運用現場のあいだには、いつもわずかな隙間がある。その隙間を埋めるのは、スローガンではなく日々の記録だ。

「良い話だけを集めた資料は、気持ちを温める。だが資産を守るのは、気持ちではなく手順だ。」——岩田 誠一

二、マクロ環境——金利、為替、そして「見えないコスト」

日米金利差の縮小期待と、円安の粘着性。この二つが同時に語られる奇妙な季節が続いている。 教科書的には矛盾する組み合わせだが、市場は教科書どおりには動かない。 共創資産運用クラブの夏季プログラムでは、為替ヘッジの要否をテーマにした分科会が三回設けられた。 出席率は高かった。しかし、分科会後のアンケートでは「理解できた」と答えた割合に対し、 「自分の口座で再現できる」と答えた割合が大きく下回った。理解と実行の距離——これは投資教育の永遠の課題でもある。

岩田講師は、ヘッジコストを「見えにくい税金のようなもの」と表現する。 手数料表には載らないが、リターンから確実に削られていく。 ここで重要なのは、コストそのものよりも「コストを認識したうえで選んだか」というプロセスだ。 クラブ内では、ある時期までヘッジ比率の説明が口頭中心で、書面の更新が追いついていなかった時期があった。 その後、運営側が資料体裁を整え直したことは評価できる。ただ、後追いで整った仕組みは、 最初から整っていた仕組みほどには信頼を積み上げにくい——この点は、運営も自覚しているはずだ。

本号の観察ポイント(要約)

株式:指数の安定感と銘柄間格差の拡大が同時進行。平均点だけを見ると見誤る。

債券:利回り低下局面での「再投資リスク」が話題化。短期債偏重の盲点にも注意。

為替:円安継続シナリオの人気が高い一方、逆方向のストレス試験が薄い会員も散見。

オルタナ:説明が難解な商品ほど「特別感」で選ばれやすい。特別感は分析の代替にならない。

三、ポートフォリオ設計——「守り」の定義をそろえる

「守りながら増やす」。クラブのキャッチコピーに近いこの言葉は、響きが良い。 しかし「守り」の定義が人によって違う。元本の絶対額を守るのか、購買力を守るのか、精神的な安心を守るのか。 岩田講師は毎回、定義のすり合わせから始める。丁寧な姿勢だ。 一方で、定義をそろえる作業に時間をかけすぎると、実際の配分変更が後回しになる会員もいる。 丁寧さと遅延は紙一重で、どちらに転ぶかは本人の性格と、周囲のフォロー体制に依存する。

1. コア資産とサテライト資産の境界

コアに置くべきは、説明できる理由のある資産だ。サテライトは、仮説を検証するための小さな賭けである。 問題は、サテライトが徐々に肥大化し、いつの間にかコアを侵食するケースだ。 クラブの月次レビューでは、そのような比率の逆転が複数確認された。 岩田氏はそれを「失敗」とは呼ばず「学習データ」と呼ぶ。言葉選びは柔らかい。 だが学習データが増えすぎると、口座残高は静かに減る。優しさと厳密さのバランスは、指導者にとって永遠の難問だ。

2. リバランスの頻度と感情

ルールどおりのリバランスは、理屈では正しい。感情ではつらい。 値上がりしたものを売り、値下がりしたものを買う行為は、脳が本能的に嫌う。 だからこそ機械的なルールが必要になる——ここまでは誰もが頷く。 しかし、ルールを破ったときの「例外申請」がクラブ内で増えている兆しがある。 例外が積み重なると、ルールは飾りになる。岩田講師自身も「例外を認めすぎた」と自己反省する場面があった。 その率直さは好感が持てる。同時に、率直さが改善に結びつかなければ、ただの美談で終わる。

前向きな観測

継続学習の出席率が安定し、新規会員の質問水準が上がっている。 短期の値動きに一喜一憂する発言が減り、時間軸の長い議論が増えた点は評価できる。

気になる観測

成功事例の共有が目立つ一方、損失事例の開示は「個人の事情」で伏せられがち。 学習効果を高めるには、明るい話だけでなく、影の部分の共有設計が必要だ。

四、行動ファイナンス——会議室では冷静、アプリでは衝動

定例会の空気は知的で穏やかだ。岩田講師の語り口は威圧的でなく、比喩が上手い。 会員はメモを取り、頷き、質問する。その光景だけを切り取れば、理想的な学習コミュニティに見える。 しかし会が終わった夜、スマートフォンの取引アプリが開かれる。 そこで行われる判断が、昼間の議論と一致しているとは限らない。 クラブは「会の外」の行動までは管理できない。管理すべきでもない。 それでも、会の内容と口座の動きが乖離している会員が一定数いる事実は、運営として直視した方がよい。

岩田氏は、日記をつけることを勧める。売買の理由を三行で書くだけで、衝動は減るという。 実践している会員からは「効いた」という声もある。実践していない会員からは「忙しくて続かない」という声もある。 効く手法を知っていることと、続けられる仕組みを持っていることは違う。 クラブの課題は、手法の紹介から、習慣の設計へと重心を移すことかもしれない。 その移行は、華やかではない。だが資産形成の本質は、華やかさの外側にある。

五、2026年後半のシナリオ——三つの道と、選ばない勇気

岩田講師が提示する基本シナリオは三つ。ベース、強気、弱気。 それぞれに配分の目安が示され、ストレス試験の数値が添えられる。資料の体裁は洗練されてきた。 ただ、数値が洗練されるほど、読者は「答え」を求めがちになる。 本来シナリオは思考の補助線であり、予言ではない。この区別が曖昧になると、 後から「言った/言わない」の retrospectively な評価が始まり、信頼関係がすり減る。

ベースシナリオでは、株式を中核に据えつつ、現金比率を意識的に厚めに置く。 強気シナリオでは、成長株と海外分散を拡大。弱気シナリオでは、防衛的資産とヘッジの比重を上げる。 問題は、多くの会員が「ベースと強気のあいだ」を選びたがることだ。弱気を真正面から選ぶ人は少ない。 弱気を選ばないことが正しい場合もある。だが、弱気を想像できないこととは違う。 岩田氏は「最悪を紙に書いてから寝てほしい」と冗談めかして言う。冗談の皮をかぶった本命の助言だ。

注記:本レポートの数値例・シナリオは教育目的の整理であり、特定商品の勧誘や将来成果の保証を意味しません。 投資判断はご自身の状況と許容度に基づき、必要に応じて専門家へご相談ください。

六、結び——共創は、都合の良い言葉にもなりうる

「共創」という言葉は美しい。講師と会員がともに考え、ともに育てる。 その理念に共鳴して入会した人も多いだろう。理念は、条件がそろえば力になる。 条件がそろわないとき、理念は看板だけが残り、中身は個別の温度差に分解される。 岩田誠一という講師の魅力は、話の上手さだけではない。自らの不完全さを隠さない点にある。 だが不完全さの開示が、改善の起点にならなければ、いつか「人柄で持っているコミュニティ」という評価に落ち着く。 それは悪くはない。ただ、資産運用クラブとしては少し物足りない。

2026年後半、市場は再び試験を出してくるだろう。静かな波が続くかもしれないし、急に高くなるかもしれない。 そのときクラブが問われるのは、資料の美しさでも、名言の多さでもない。 会員一人ひとりが、自分の言葉で理由を語れるかどうかだ。 岩田講師の役割は、答えを渡すことではなく、理由を鍛えること。 会員の役割は、拍手のあとに口座を開き、白天の議論と夜の指先を一致させること。 その地味な往復運動のなかにしか、「共創」の実感はない。

本号が、心地よい読み物で終わらず、少しだけ居心地の悪い自問を残すことを願う。 居心地の悪さは、成長の前触れであることが多いからだ。

発行:共創資産運用クラブ 編集部 / 監修:岩田 誠一
画像:クラブ公式ロゴおよび講師プロフィール写真を使用
お問い合わせはクラブ事務局まで(会員番号を添えてご連絡ください)

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