2026-08-17
HaiPress
〈東京ガチ中華〉第24回
シベリア抑留を体験した祖父は、戦争のことを語らないまま、だいぶ前に亡くなった。戦後80年を迎えた昨年、旧陸軍軍人の軍歴照会制度があると聞き、東京都福祉局に問い合わせた。

中国黒竜江省黒河のロシア国境。対岸にはロシアの旗が立っている(2023年2月撮影)
開示された書類に、足跡が記されていた。釜山から朝鮮半島経由で旧満州(中国東北部)に入り、現在の黒竜江省黒河で国境警備をしていたこと、1945年8月17日にソ連赤軍によって抑留され、1947年にナホトカ港から舞鶴港に戻ったことなどが初めて分かった。

湯島駅近くにある「味坊鉄鍋荘」
黒河には取材で一度、行ったことがあったが「先にこの事実を知っていれば、他にも行けるところはあった」という悔いが残る。そんな折に、ガチ中華界の第一人者とも言われる「味坊集団」の梁宝璋会長が黒河の南隣、チチハルの出身だと知った。祖父の人生とも切り離せない中国東北部の味を求め、「味坊鉄鍋荘」(台東区上野)を訪ねた。

トウモロコシのペーストや小麦のパン生地などを入れて蒸しながら煮込む「鉄鍋炖」
梁さんが「東北地方で知らない人はいない」という「鉄鍋炖(ティエグオドゥン)」。大きな鉄鍋に肉や野菜を入れて、ふたをして蒸しながら煮込む。鍋の縁に貼り付けたトウモロコシのペーストと小麦のパン生地に、煮詰まったスープがしみこむ。

発酵した白菜と豚肉のコクが特徴の「酸菜炖白肉」
「酸菜炖白肉(スワンツァイ ドゥン バイロウ)」は、発酵した白菜の酸味と豚バラ肉のコクがスープに溶け込み、コショウや八角、パクチーのアクセントが効いている。
「羊肉炖蘿蔔(ヤンロウ ドゥン ルオボー=大根の意)」は、鶏と豚の骨から取ったスープにしょうゆで味付けし、羊肉を煮込んだ豪華な鍋。うま味調味料を一切使わないのが味坊のこだわりという。「1970年代の子どものころは、肉の代わりにラードを入れていた。当時はそれでもぜいたくだった」と梁さんは懐かしそうだ。

店内に貼られた中国・黒竜江省の地図
梁さんの母親は中国残留孤児。中国の養父母が育ててくれた。「母が小さい時で、(日本人の両親の)記憶は何も残っていない。私の祖父母はおそらく現地で亡くなったのだと思う」と話す。
「当時は中国全体が貧しくて大変な時代。母も勤勉で負けず嫌いな人だった。昼は外で仕事をして、家に帰ってもご飯を作ったり洗濯をしたりしていて、休んでいた記憶がない」と振り返る梁さん。その母親も育ての母親が亡くなった後、1994...
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