2025-12-02
HaiPress
東京変貌〈潤日に迫る〉②(全6回)
実に3年ぶりの再会だった。
相手は、中国人の劉建さん(仮名)。かつて「日本の不動産は格安だ」と話していた、日本の不動産を扱う仲介業者だ。
タレントの高田純次さんを彷彿とさせる男前の風貌。パリッとしたスーツを着て、一見すると日本人サラリーマンのような、いでたちで現れた。
劉さんとは、私が中国特派員だった5年ほど前、日本人や中国人の企業の関係者が集まる交流会で知り合った。
「東京の不動産の人気が高まっている」。そう言いながら、劉さんはスマホアプリのSNSで盛んに東京の不動産物件を紹介していた。
顧客の多くは中国の富裕層だ。
アプリの画面をスクロールすると、都内の不動産物件が並び、最寄りの駅や物件価格、投資した際に得られる利回りが一覧できる。
オンラインでの内見もできるといい、コロナ禍で日本に行けなくても、こうしたSNSを通じて、都内の不動産情報が分かるのだと驚いた。

劉さんが気に入っていた都内の中華料理店の青椒肉絲定食
久々の再会を果たしたこの日、一緒に入ったのは、都内で現地の中華料理が食べられる「ガチ中華」の店だった。
劉さんは「これがウマいんだよ。日本人はみんな好きでしょ」と、意外にも日本人好みの青椒肉絲(チンジャオロース)定食を注文した。
最近では、東京の物件を紹介するショート動画を中国のSNSで発信しているという。
口ぶりからは業績は好調のようで、「ぜひチャンネル登録してよ」と笑った。
劉さんに、中国から日本に移住する「潤日(ルンリィー)」の実態を尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。
「この2、3年で目立って増えたのは、『経営・管理ビザ』を取得して日本に来た人だ」
経営・管理ビザは、日本で企業経営を行う外国人向けの在留資格のこと。日本政府が、海外から投資や起業人材を呼び込もうと2015年に導入した制度だ。
経営の経験がなくても、資本金500万円を用意できれば、従来よりも簡単に日本の在留資格を得ることができた。その上、経営・管理ビザを取得すれば法人名義の投資用ローンも組みやすくなる。
昔から「華僑」で知られる国だけあって、中国には、海外各国の移民政策にあわせて移住の手法を指南してくれる「移民コンサル業者」が存在する。このコンサル業者が、経営・管理ビザの取得と移住の手続きを行ってくれるのだ。
私も北京駐在中、「経営・管理ビザを使って日本への移住を検討している」という話をよく耳にしていた。
実際、出入国在留管理庁の統計を見ると、経営・管理ビザで新たに在留資格を得て入国した中国人の数は、コロナ禍を機に急増している。2023年は3700人を超え、過去最多となった。

劉さんによると、経営・管理ビザを使って日本に移住し、東京のマンションを買おうとする中国人が増えたのだという 。
劉さんは「円安だし、東京のマンションは、北京や上海などの富裕層には全然買えるレベル」と説明する。
2021年には1元=17円程度だったが、2022年以降は1元=20円前後を推移する円安が続いている。
「上海に2軒持っている人はそのうち1軒を売って、日本の不動産を買う資金にする人もいる」とも話す。
東京のマンションを購入するのは、40代の働き盛りから、仕事を引退した60代までが多いそうだ。
劉さんが相手にしている中国人は、1億~2億円を住宅ローンで借りてマンションを買う潤日もいれば、キャッシュで高額物件を一括購入する資産家もいるという。
中には日本語ができない人も多いが、日本の経営・管理ビザを取れば、日...
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