首都・東京のクラブだから…ヴェルディがこだわった「海外提携」 スペイン・ベティスと共有する「緑への愛」

2024-08-14 HaiPress

サッカーのJ1東京Vが今季、16年ぶりのJ1復帰を弾みとした成長戦略に着手している。その一つである海外クラブとのパートナーシップ締結。過去Jクラブには海外クラブと業務提携しながら具体的に進展しなかった例もあるが、東京Vは「意図を持ったアプローチ」でパイプをつないだという。目指す取り組みを探った。(上條憲也)

パートナーシップを結び、ユニホームを交換する東京Vのマスコット「リヴェルン」(左)とベティスの「パルメリン」©TOKYO VERDY

◆両クラブとも選手育成に定評

「双方が今回の中身に価値を感じ、意味を見いだすからこそ(パートナーを)組む」と話すのは、東京Vの中村孝昭社長。7月にスペイン1部の古豪ベティスとのパートナーシップ締結を発表した。その中にあるのが、サッカーで不可欠な選手育成であり、昨今の気候変動問題を受けた環境負荷低減での連携だ。

欧州クラブから日本選手の「理解度の高さ」が評価されている近年はベティスからも同様に関心が向く。スペインでは育成組織がどのクラブも整うが、東京Vも古くから選手育成に定評がある。さらに企業や大学などと手を携え、社会課題解決や人材の発掘育成輩出を目指す「イノベーション・ハブ」という科学的アプローチにも昨年から取り組む。

J1昇格を決め、サポーターと一緒に喜ぶ東京Vイレブン=2023年12月2日

この一環で東京Vは、男女の各下部組織で選手のキックモーションなど各種データを集めてきた。締結でこうした情報も共有し、継続的な分析を経ることでベティスから高い評価を受ける選手が出てくるかもしれない。育成面で今後はスコットランドのクラブとの提携も見据え、将来は一堂に会したカンファレンスの開催もありそうだ。

◆ファンを巻き込んだ環境活動

もう一つの柱が環境活動。東京Vは「TOKYO♡(ラブ)GREEN」というロゴを今季ユニホームの袖に入れ、クラブとしてこの点に注力する姿勢を示してきた。同じ緑色をクラブカラーとするベティスも「フォーエバー・グリーン」という活動を展開。スタジアムでのリサイクルなどの取り組みを積み重ねてきた。

ベティスはリバプール(イングランド・プレミアリーグ)などと同様に先進的なクラブとして知られ、「地球上で最も人気のあるスポーツの力を活用し、多くのファンと気候変動に対するアクションを考えていく」と掲げる。教育プログラムなど含め東京Vも「先進事例を取り入れながら実現していきたい」とする。

こうしたグローバルな連携を、東京Vは地域としての東京のクラブであるとともに首都東京のクラブとして「足元のホームタウンでしっかり活動しながら、その価値を高めていくために必然的にグローバルな活動は求められること」(中村社長)と話す。

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◆代表育成を目指すシンガポールとも覚書

東京Vは6月に、シンガポール文化社会青年省の法定機関であるスポーツシンガポールとも覚書を締結した。下部組織から有能な選手を輩出してきた東京Vに対し、アカデミーを含めた代表チームの育成強化を目指すシンガポール側から打診があった形だ。

城福浩監督=2023年12月2日

東京Vも前向きな締結だったとし、中村社長は「選んでもらえるようになった。うちは(一連の)すべての取り組みが(資金や成果を)得ながら実現している。これも大きな進歩」と実感する。

来日中の研修コーチ2人がトップチームの練習やミーティングなどすべてに参加している。城福浩監督は「彼らの学ぶ姿勢が選手やスタッフの刺激になる。もう一つは(資金獲得など)いろいろなものが発生する。そこをチーム強化(選手獲得)に使えるようクラブと話をしている」と話す。

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◆湘南は「正確な情報」求め提携

今季J1では、町田が7月にフランス1部リヨンとアカデミー部門でパートナー締結し、育成年代から国際経験の充実を図ることになった。FC東京はポーランドの古豪レギアワルシャワと6月に業務提携。イングランド・プレミアリーグのウルバーハンプトン(愛称ウルブス)とパートナーシップを4月に結んだのは湘南。真壁潔会長は、提携先と互いに得たいものは「より正確な情報」という。

4月にイングランド・プレミアリーグのウルバーハンプトンとパートナーシップ締結し、ユニホームを交換する湘南の真壁潔会長(右)

日本も近年は育成年代から海外志向が強く、真壁会長は「すぐには行かせたくないが、行かせるなら良い行き方をさせたい」。湘南はここ数年で下部組織を含め海外に挑んだ選手がいたが、移籍後はどんな状況か、レベルが合っているか情報が乏しかった。

◆移籍選手のステップアップを意識

ウルブスは12人のスカウトが欧州を中心に世界のサッカーを見て、情報が集約される。真壁会長は「海外挑戦した選手の使われ方などを協議し、だめだったら(ウルブスのパイプを介して)違うクラブでいいのでは」などの情報共有ができるという。

クラブの「生き方」でもある。湘南の下部組織出身の遠藤航(リバプール)が日本からベルギー、ドイツのクラブを経てプレミアに移籍した際、育成年代に所属したクラブに支払われる国際ルールの連帯貢献金が入った。会長は「ステップアップできるようにしてあげた方が選手のプラスになり、結果、うちにもお金が入ることが実証されている」と意義を強調する。


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